光エネルギーを用いる触媒的アルコール還元反応の開発

松原 亮介
(神戸大学大学院 理学研究科 化学専攻 准教授)

2014年4月14日月曜日

一年のまとめ

「光エネルギーを用いる触媒的アルコール還元反応の開発」というテーマで1年間研究をさせていただきました。

1年間で計画していたことを全てすることはできませんでしたが、そもそもこの研究テーマは予備実験など全くなく机上で考えたものでしたので、それを考慮すると少し得るものがあったのでラッキーだったかなと思います。自然の摂理に逆らうことはできませんので、工夫してもどうしようもないことがあります。我々の研究に対して、自然はまだ完全には認めてくれていませんが、少なくとも全くだめだとは言っていないようです。

具体的に簡潔に成果を述べると、我々が設計した触媒系を用いると、アルコールの直接的還元反応が13%収率で進行しました。

収率というのは最高100%ですので、その13%というと極めて低収率でこのままでは使い物になりません。確かにそうなのですが、今まで1%だったものが13%になったのと今まで0%だったものが13%になったというのでは意味合いが異なり、今回の結果は後者のものですので、それなりに満足しています。

研究以外では、やさしい科学技術セミナーを開催させていただきました。私は中学生10名ほどの生徒さんに講義と実験を体験してもらいました。私はそれまで大学生にしか教えたことがなかったので、とても良い経験になりました。機会あれば今後も積極的に続けていきたいと思います。


はじめは正直、ブログを書くように勧めたり一般向けセミナーを開催させたりと、特異な財団だと思っておりましたが、今は研究者仲間に最も勧めたい研究助成財団です。ありがとうございました。また、今後とも長いお付き合いをお願いいたします。

2014年1月29日水曜日

文献検索に関する話

小倉さんからあからさまな催促をいただきましたので更新いたします(笑)
皆様、今年もよろしくお願いいたします。

研究者をやっていて、やはり一番嫌だと思うのは、文献検索じゃないかと思います。なにか面白い結果が得られたが、これは果たしてこれまでに報告されていたかどうか、2年前は誰もやっていなかったけど、今でもやっぱり報告例はないのか、などを調べるのは非常に労力がかかります。でもこれをやっておかないと後で非常に痛い目を見るので、とても重要です。あることを証明するのは簡単なのですが、ないことを証明するのは難しいですね。

さて、この文献検索においても、最近(ここ10数年)になり非常に進歩しました。私が学生の頃はぎりぎりscifinderがなく、chemical abstractという図書館一列を埋め尽くすほどの本を一日がかりで検索していました。しかもこの検索法は穴だらけで、見つからなかったとしても本当にないと自信を持つのは非常に難しかったです。

それからscifinderなどの検索ソフトの恩恵を受けられるようになり検索が格段に楽になりました。これは本当にありがたいです。ただ、scifinderなどの検索ソフトのライセンスは高いですね。私の大学では、1ライセンスが1年で10万円です。

驚きなのは、この文献検索においてもgoogle検索が非常に役立つということです。過去の文献がデータベース化(電子化)されてきているのが大きな要因かと思いますが、これには本当に驚きです。また、たとえば酸化反応の種類を調べたいと思ったら、「酸化反応」とググればたいてい世界の誰かがきれいにまとめてwebに載せてくれていたりするので、最近は専門書や教科書以上に役立つ情報を手に入れることができます。

と、雑談っぽいblogとなりました。すいません。

2013年11月16日土曜日

やさしい科学技術セミナー終わりました

やさしい科学技術セミナー終わりました。

まずは、お世話になりました中原さん、小倉さん、安田先生、それと研究室のTAの学生さん、どうもありがとうございました。おかげさまで無事に終了と言っていいと思います。

それから来てくださった生徒さん、引率の先生方、本当にお疲れ様でした。

少し振り返ってみますと、
①座学
 最初の方はやっぱり中学生にはつらかったかなあと。原子や分子という話をしました。これを話さないと始まらないのですが、もう少し興味を引くように話を組み立てればよかったかと。反省点です。臭いの分子を渡したあたりから生徒さんの目が少し復活してくれました。

②実験
 何とかほぼ時間内に終了しました。四塩化チタンを水に垂らしてモクモクと煙が出るという実験でまずは生徒さんの心をつかんで、、、とか思っていたのですが、案外煙モクモクがしょぼかったです、、、こじんまりとしていました。
 次のエタンチオールで少し救われました。やはり臭いがギネスブック級ということで、それなりに驚き苦しんでいただきました。困ったときのエタンチオールです。大学の授業なんかでも重宝しています。
 あとのクロマトグラフィーの実験は、物質の分離を学んでいただく実験で、ちょっとまじめなものです。このあたりでは生徒さんもTAとなじんできていたので、笑いも出ながら本当の実験というものを体験していたという印象です。

反省点は多かったですが、全体としてまあよしとさせてください。肩の荷が下りました。

さて、セミナー終了後にちょっとしたハプニングがありました。
エタンチオールはあまりに臭いがきつく、ガス漏れの際の臭いと同一なので大気に多く蒸散させると近隣住民から消防車を呼ばれます、とセミナー中に説明していました。ですので、これを処分する際は、酸化剤と反応させて臭いのない酸化物にしてから廃液として処理しないといけません。
と、TAの学生さんに言おうとしたら、既にそのまま廃液タンクの中に捨てていました、、、、
途端に部屋中がエタンチオールの臭いにまみれ、同じ階の別の研究室の学生さんや先生方が、「どうしたどうした」と集まってきました、、、、今は収まっています。また消防車も(まだ)来ていません。月曜日に廃液タンク一本の処理をしないとなあという状況です。いい経験です。

次は安田さんにバトンタッチです。私もお手伝いに参ります。頑張りましょう。


2013年11月1日金曜日

安田さんと打ち合わせ

いよいよやさしい科学技術セミナーが近づいてまいりました。時がたつのは恐ろしく早いものです。
本日、京大の安田さんがわざわざ神戸大まで来てくださり、双方のセミナーの打ち合わせを行いました。お互いがお互いのTAの一人として担当することになっています。

安田さんにはセミナーの打ち合わせ以外に、ご専門とされている金属精錬のお話をいろいろと聞かせていただきました。
安田さんはとにかく金属をこよなく愛している方です。セミナー用に金属会社からいくつかの金属をいただいたということを、非常にうれしそうにお話しされているのを見て、ほかほかした気分になりました。なんでも、旅行に行かれた時も、その場所で発掘されたという刀剣が展示されているのを見に行き、どんな不純物が入っているのだろうなどと想像されるのが楽しいとおっしゃっていました。私が薬や甘味料などがどういう分子構造をしているのだろうと興味を持つのと似たようなものだろうかと思いましたが、なんかそれ以上の研究に対する熱さを感じました。

セミナーがとても楽しみです。研究に興味を持ってくれる小中学生が一人でも増えるように頑張りたいと思います。

2013年8月7日水曜日

宣伝をちゃんとしました

8月6日に、「教員免許更新講習」というものを担当しました。これは、中高の理科の教員の方々(若い人から年配の人まで)に、私を含めた数名の大学教員が講習をするというものです。教員免許を取得したら終わり、ということではなく、取得したのちも更新制にすることで新しい情報を得る機会を与えモチベーションを保つようにということなのでしょう。
90分の講習の後には、試験をすることが義務付けられており、講習内容に即した試験を私が作成し、解いていただきました。

今回講習を受けられた方は近くの中高の理科の先生方14名でした。

で、言いたいことは、

ちゃっかり、11月16日に開催予定のやさしい科学技術セミナーの宣伝をしておきました、

ということです。何人かの先生でも、ご自分の学校の生徒さんにお話ししていただければいいなあと思います。

2013年7月26日金曜日

やさしい科学技術セミナー

やさしい科学技術セミナーの予定がほぼ決まりました。
http://www.japanprize.jp/seminar.html

まだまだ先の話ですが、とても楽しみです。

講演を60分ぐらいするだけかな、有機実験は危ないから無理かなー、と思っていました。でもそれじゃあつまらないだろう、と考え直し、講演時間を少し短くして、施設見学と実験を充実することにしました。

実験といっても有機化合物に触ってもらうことが目的です。たぶん有機溶媒を床にこぼして、一瞬でそれが蒸発すれば、へーーーっと思ってくれるでしょう。水に一滴たらしたら瞬時に白煙を上げて壊れる化合物を見せれば喜んでくれるでしょう。そんな感じの実験をいくつか用意する予定です。

2013年5月22日水曜日

論文掲載(本助成研究内容とは直接的関係はありません)

Synthesis誌に研究室から論文が出ました。
http://www2.kobe-u.ac.jp/~ryomatsu/ronbun.html

 フロキサンというヘテロ環の効率的合成法です。
 将来的に、本助成研究にもフロキサン骨格を組み込んでいければ面白いなあと考えています。

 今回の論文は、研究室を立ち上げてからの初論文で、初めて、*マーク(corresponding author)を自分の名前に付けることができました。
 講座制の研究室では、*マークを研究室のボス以外の名前にも付けるか付けないかという話はよく研究者の間で話題に上ります。ボスによっては、(たとえアイデアが誰由来のものであれ)絶対に自分以外の人間には*マークを付けさせない人もいれば、中心となって研究を進めた教員には付けさせるという人もいます。
 人事選考では、業績欄の論文リストで、この*マークがついているか、またはfirst authorかというのが考慮されることも多いようです。上で述べたように、*マークが付く付かないというのは、ボスの意向によるところが大きいので、これによって人事が影響を受けるというのも問題がありますね。他人の業績を正しく判断するのはとても難しいようです。